第十一章 モーセの紅海の軌跡

『旧約聖書』の2番目の書「出エジプト記」によれば、イスラエル(ヘブライ)人モーセが神の声を聞き、自分の民族を率いてエジプト脱出したと伝えられている。そして、この出エジプトがおきた当時のファラオとして、ラムセス2世の名があげられている。出エジプト記には、「パロ(ファラオ)が重い労役によってヘブライ人を苦しめた。ヘブライ人はパロのために倉庫の町ピトムとラムセスを建てた」という内容が書かれている。この「ラムセス」という町はラムセス2世が建造した王都「ペル・ラムセス」と考えられており、ピトムはナイルデルタの東部にあった。「出エジプトがおきたのは、ペル・ラムセスの近くと考えられています。ただし、ファラオはヘブライ人を奴隷のように使ったのではなく、労働者として雇っていたと考えるのがよいでしょう。当時ペル・ラムセスの近くには町をつくる技術をもったヘブライ人が多く住んでいました。ファラオはその助けをかりて町づくりをしたと思われます」(吉村博士談)。モーセを追ったエジプトの軍隊が追いついたとき、ヘブライ人たちの前には海があった。ここで「紅海の奇跡」がおきる。モーセが手をさし上げると海の水が引いて陸地があらわれ、ヘブライ人たちはそこを渡ることができた。エジプトの軍隊が渡ろうとすると、波が押し寄せてきて海にのみこまれてしまった。出エジプトから数か月後、モーセはシナイ半島のシナイ山でヘブライ人が守るべき「十戒」を神から授かるのである。出エジプトがおきた年代は明らかになっていない。ラムセス2世の時代という説や、その次のファラオであるメルエンプタハ王の時代という説などがある。また奇跡がおきた場所についても、紅海という説や地中海に面した場所という説が出されている。では、紅海の奇跡はどのようにおきたのだろうか。海が割れるという現象について、Newtonの竹内均前編集長は「地球物理学的に説明することが可能」と考えていた。このページのイラストは、竹内均前編集長の説をもとにえがいたものである。