第九章 オベリスクに残された謎

完成当時、ルクソール神殿の第一塔門には2本のオベリスク(高さ約25メートル)が立っていた。オベリスクは1本岩の花崗岩でつくられた記念石柱である。「焼き串」を意味するギリシア語が語源となっている。四角柱で上部になるほど細くなり、頂上はピラミッド形をしている。柱の四面には碑文やレリーフが彫られている。ルクソール神殿の第一塔門の向かって右側にあったオベリスクは、1819年にナポレオン3世が許可を得て持ち帰り、現在はパリのコンコルド広場に立てられている。その碑文にはラムセス2世の名が刻まれているという。カルナク神殿に建つハトシェプスト女王(大18王朝)のオベリスク(高さ約29.5メートル)には、「のちにこのオベリスクを見る人は、このオベリスクがどのようにして立てられたのかを不思議に思うことだろう」と書かれている。ハトシェプスト女王は、記録上では女性で唯一ファラオといわれている人物だ。「オベリスクには立て方の答えは記されていません。いくつかの説が出されていますが、正解はまだみつかっていません。」(吉村博士談)。神殿の工事では、まずファラオが名目的な建設者となって着工式をとり行った。基礎工事の部分から、建築用具の模型や安全を祈願する供え物がときどき発見されている。神殿には切りだされた巨大な石材が用いられた。ラムセス2世は、以前のファラオが建てられた神殿をこわし、その石を材料として自分の神殿をつくったりもしている。「ラムセス2世がつくった神殿などの石をはずして調べてみると、ほかのファラオの名が記されていることがあります。遠くはなれたアスワン(花崗岩の産地)から石材を運ぶより、近場にある建築物の石を用いたほうが早いとラムセス2世は考えたのではないでしょうか」(吉村博士談)。