第七章 至聖所にまつられた神

1年に2度の特別な日、ついに朝日が中央の入り口から神殿の中に入りはじめた。手前の大列柱室には、高さ約10メートルのラムセス2世像が左右に4体ずつ並んでいる。大列柱室の両側の壁には、カデシュの戦いの戦闘場面が壮大にえがかれている。大列柱室とそれにつづく前室を通り抜けた太陽の光は、最深部の至聖所に到達する。至聖所の前面の壁には、4体の神像が彫られている。向って右から順に、頭上に日輪をいだく太陽神ラー・ホルアクティ神、神格化されたラムセス2世像、2本の羽をいただくアメン・ラー象、エジプト最古の王都メンフィスの主神プタハ神である。太陽の光はラー・ホルアクティ神、ラムセス2世像、アメン・ラー象を照らしだす。プタハ神に光があたらないのは闇の神でもあるためといわれている。ラムセス2世の時代、アブ・シンベル大神殿のような巨大な建造物に、このような精密な細工をほどこすことができる高度な建築技術が存在していたのだ。「ラムセス2世が、なぜこれほど大きな神殿をエジプトの中心地から遠く離れた場所へ建てたのか、またどんな目的があったのかなどについては明らかにされていません。周辺地域の発掘が進んで何らかの手がかりが出土すれば、将来こうしたなぞも解明されるかもしれません。」(吉村博士談)