第一章 偉大なる王による輝かしい時代のはじまり

「エジプトで最も偉大なるファラオ」「大王」「建築王」。これらはみな、古代エジプト第19王朝のファラオ「ラムセス2世(在位前1279年ごろ~前1213年ごろ)」の呼び名です。ファラオは「エジプトの王」を意味し、古代エジプト語の「ペル・アア(大きい家という意味)」が語源となっています。
ラムセス2世はファラオである父セティ1世の次男として紀元前1305年に生まれました。兄は幼くして亡くなっています。ラムセス2世はセティ1世の死去にともなって26歳ごろにファラオの座につき、以後67年の長きにわたってエジプトを統治しました。
「歴代の王の中でもとび抜けて多くの業績を残し、古代エジプト史上に燦然と輝く偉大なファラオ。それがラムセス2世なのです。」早稲田大学の吉村作治教授はそう語ります。

ラムセス2世は、軍事遠征を何度も行って領土を広げました。
最も有名な戦争が、小アジア(アジア西端の半島)の強国ヒッタイトと衝突した「カデシュの戦い」です。
一方で、ラムセス2世はアブ・シンベル大神殿に代表される巨大な建造物を、エジプトの各地に次々とつくっていきました。
ラムセス2世が彼の第一王妃ネフェルタリのために建造した墓は、王妃の墓の中で最も華麗なものといわれています。
古代エジプト(前3000年ごろ~前30年ごろ)は31の王朝(王家)からなり、それらは大きく九つの時代に分けられています。
ラムセス2世は「新王国時代(前1565年ごろ~前1070年ごろ)」のファラオです。
「新王国時代は、古代エジプトで最も豊かで繁栄した時代です。立派な神殿や葬祭殿などが次々と建造されました。
現在のエジプトに残っている歴史的な建造物は、大半がこの時代につくられたものといわれています」(吉村教授談)。
葬祭殿とはファラオの葬儀を行うためのものです。葬儀が終わったあとは神殿になります。
ラムセス2世の葬祭殿(ラムセウム)も現存しています。
紀元前1200年代といえば、日本では弥生時代にあたっています。
そのころ古代エジプトでは、一人の偉大なる王による輝かしい時代がはじまろうとしていたのです。